2012/07/16

袋物のこと



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和の袋物の中で、茶道で個人が使うもの(扇子、袱紗、古帛紗、懐紙、楊枝など)を入れるものには数寄屋袋、懐紙入れ、袱紗ばさみなどと呼ぶ物があります。

それなりにたくさんの物が売られているのですが、なかなか気に入ったものに出会えないので自分用に作ったのが始まりで、ずいぶんたくさん作ってきました。
このような袋物を作るのは専門の職人さんがいらっしゃり、意外なほど縫わずに糊で貼る加工です。縫い目がなく芯がしっかりとしている分ぱりっとした仕上がりが良いです。

たまたま、この春にはオリジナルな袋物のご注文が続きました。
それぞれのお好みに合う裂地を選んで、使いやすい型に仕上げてもらいました。
ちょっと贅沢ですけど....。

2012/04/11

バッグのこと  2

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きものに限らず、必需品のバッグ。
私はあまり和装ぽいのは持たず、洋服と兼用が多いです。
「きものまわり」、「お茶まわり」の小物類と同じように私の裂地でバッグを時々作ります。
お客様のご要望でサイズやデザインを決めることもあり、また縫製してくださる方のデザインで作ることもあります。
基本的にはできるだけシンプルに裂地の持ち味を生かして、品のよいものを。。。もちろん一つだけのオリジナルで。
今回出来上がったのは、
一つは、青磁色の着尺の紬地に同色の帯の紬地をプラスした縦長のシンプルな手提げバッグ。持ち手は絹の真田紐です。
これは楽譜を入れるサブバッグとしてお誂えしました。
もう一つは、以前自分用にざっくりとした紬でスーツを作りました。(シルクツイードという感じでしょうか。たまに洋服地も織ります)
その裂地で小ぶりのバッグを作りました。これは裏に絹の小紋地を使いキルティングをしてあります。
軽くて持ちやすく、きもの、洋服どちらにも使えそうです。

2012/03/20

桃の樹のこと 3

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一昨年の秋(2010.10月)にこのブログに書いていた「桃の樹のこと 1.2」を覚えてくださっているでしょうか。
友人のご実家の想いのこもった桃の樹を伐らなければいけなくなり、糸に染め織物にすることで想い出を形のあるものにして残そうと、枝や幹を送ってもらいました。
思っている以上に綺麗な桃の実のような薄桃色が染まりました。
戸棚の中で一年あまりゆっくりと眠っていました。
その友人から昨秋、「来年のお雛祭の頃に、信州の旧家のお雛さまのイベントに着ていきたいなぁ....!」とリクエストがあり、ちょうど春が待ち遠しい新年から制作していました。
旧暦のお節句にお出かけになるので、なんとか間に合わせることができました。
出会えた色が素直に生かせるように、桃の樹からの数色と白だけですっきりとした細い縦縞にしました。
帯は練り色地に六色の間道。春らしくうきうきするような帯になりました。

2012/02/08

信玄袋のこと

少しづつですが、男性のきもの姿も増えてきたように思います。
私の周りでは、もともとのお洒落が高じてくるのと、伝統的な事柄に興味を持たれることが重なって、ありきたりではない着物やきもの周りの小物に関心を持たれるようです。
女性にくらべて小物のアイテムは多くありませんが、その分お洒落なものがなかなか見つからないそうです。
今回、お二方の信玄袋をお誂えいたしました。
デザインはいろいろ迷った結果、シンプルなまち付きの信玄袋になりました。
着尺用の裂地を使い、たて縞のは革のまち、焦げ茶色の無地のは共裂のまち。
大きさは標準の大きさと、一回り大きめです。
ふつうは丸紐が通っているのですが、大好きな真田紐に変えてみたらすごく素敵になりました。

2012/01/26

羽織のこと 4

寒い日が続いています。
今年一番に仕上がった羽織です。
グレー、ベージュ、オフホワイトで細かな変わり縞です。
どちらかと言うとシックでシンプルなお好みの方ですので、羽裏地もいつもの縫い絞りの淡い草木染めではなく、モダンなプリント感覚の柄と色を合わせました。
羽織紐の引き締め色の焦げ茶色です。

2012/01/04

お正月のこと

新年明けましておめでとうございます。 
今年もどうぞ宜しくお願いいたします。
お正月の三ヶ日を過ごし、これから寒さはますます厳しくなってきますが、少しずつ日が長くなってくるためか、春を待つ気分になります。
お正月を迎えるための準備も年々簡単にしてしまうようになってきていますが、新年を迎えるときに、ささやかなものでも新しいもの、春を感じるものを身につけるのはやっぱりうきうきとするように思います。
きもの姿の仕上げは帯揚げと帯締め。
昨秋、直接にはお目にかかっていない方が、このブログをご覧になって「桜染め」のオリジナルの帯締めと帯揚げのお誂えをご注文くださいました。いつものように、すっかり時間がかかってしまい、なんとか年末にお届けすることができました。
お送りする前に、並べてみたら、忙しさに追われる私自身が、なんだかホォ〜っと微笑んでしまうくらい癒されました。これが「自然からいただく色の力」なのでしょうか。

2011/12/12

グレーと茶色のこと

あまり晩秋を感じることなく十一月が過ぎ、師走に入りやっと冬らしくなりました。
この秋に向けて制作したきものと帯です。
以前、桜で染めた柔らかなピンクのきものと藤鼠色の帯を作らせていただいた方から、
「グレーのきものと茶色の帯」と言うテーマをいただいて作りました。
やはり、はじめのきものは春の雰囲気がします。そして今回のきものは秋の雰囲気がします。
グレーは「いまどきの紬のきもの」の代表格のようです。シックで都会的。
洋服の感覚でコーディネートしやすく、洋服の中でも浮かない。そしてどんな色とも合わせやすい。
グレーの無地紬からきものに入られた方も多いことかと思います。
私の作る「グレーの紬」は近づくと分かる綺麗で可愛い色もいっぱい見え隠れします。
全体には栗や藍の茎など様々な植物で染めたグレーの濃淡。
経糸には虹のように鮮やかな色がかすかに潜んでいます。
緯糸には光の筋のように明るい色が差し込んでいます。
帯は焦げ茶とベージュとグレーを使ってギンガムチェックのような小格子を織り出しました。

2011/10/26

秋ストールのこと

暖かな十月でしたが、朝夕の風は冷たくなってきていよいよ秋が深まってきます。
春から夏にかけての薄く軽やかなストールでは少し頼りなくなってきました。
今年はいつもより早く秋冬のストールを織りました。
実を言うと、八月末の新宿ISETANでの展示会に向けて秋らしいストールも!!、と真夏に作ってみたのです。
ところがその会期はまだまだ夏の暑さでしたから、残念ながらちょっと気分に合いませんでした。
ふんわりとした太い真綿紬糸をざっくり織った、幅広のストール2タイプです。
それぞれ少しずつ柄や色が違う格子や縞です。
ピンク系のは桜で染めた優しいベージュピンクにグレーや白を加えて。
ベージュ系のはやはり桜で染めたベージュに藍染めの縹色、栗で染めた茶色や白を加えて。
こちらは大好きな丹波布をイメージして作ってみました。
広くかけて着物ショールに。細くたたんで洋服マフラーに。

2011/08/13

新宿ISETAN 小物展のこと

6月には久し振りに少し長い欧州への旅をしてきました。「美しいもの」をたくさん見ることができた旅でした。私も良いものを作っていきたいと改めて思いました。
そして、夏。本当に暑い日々が続いています。
もうずいぶん、さしせまってきてのお知らせなのですが、8月の24日から29日、新宿ISETANで小物展をしていただくことになりました!!
新宿ISETAN7階の和装小物のフロアです。
お近くの方、ぜひお出掛け下さい。私も会期中、毎日少し在店する予定です。
詳しくは下記のISETANのHPへジャンプしてみて下さい。
そんなわけで、目下それにむけて制作中です。
出品するアイテムはこれまでとそんなに変わりませんが、少しずつ新作も。ストールは幅の広いのもかなり作っています。時間の許す限りいっぱい作りたいと思っています

2011/06/12

単衣のこと 2

引き続き単衣のきものです。今回は盛夏にむけての「薄物」です。
麻上布のように張りがあり、透けるので見るからに涼しげな織物です。
生絹(すずし)、絹芭蕉、紗紬、生紬などなどいろんな呼び方がありますが、つまり精錬していない絹糸は麻糸のように硬いので織り目がつまらず、光沢がなくシャリっとした織物になります。
そのおかげで、肌にまとわりつかず風が入りやすいので涼しく感じられます。
下着や長襦袢、半襟や小物も夏らしい素材にすると夏ならではの着心地です。
実際にはやはり暑いし、汗はかくし、後の手入れもしなくてはいけないし、、、袷の時期以上に大変なんですが。
「きもの好き」が高じてくると、真夏にきものを着て「涼しそうですね!」なんて褒めていただけると、何とも言えない達成感を感じられるから不思議です。
このきものは桜で染めた生糸の中に数色の寒色と白の練糸を縞にした経糸に、赤城の節糸を生糸で緯糸として織っています。節糸の太細が紬糸と同じような味わいを表しています。
盛夏ものというと、ナチュラルな生成りや白、クールな色を地色に考えるところなのですが、御召し下さる方のイメージで、どうしても優しげな桜色を使いたくなりました。
直接お会いした方にお誂えさせていただく愉しみがこんなところにもあります。

2011/05/26

単衣のこと 1

またまたご無沙汰をしておりました。寒い三月からいきなり五月下旬へスキップしました。
単衣は6月からと言っても、この頃は五月でも暑い日が多いですね。
とくに春単衣は早めに着ると軽く涼しく爽やかに感じます。
私は暑がりですから五月中旬の葵祭のころから単衣を着ます。きもの初心者の時には「袷の季節にしか着ないわ!」なんて思っていましたが、どんどんはまるにつれて単衣が気になってしょうがなくなりました。
織りのきものが好きな方には多いかもしれません。とくにナチュラルな素材感が好きな方にとっては春単衣、盛夏単衣、秋単衣と微妙に質感が変化するので着心地も変わってきます。
色はやはり爽やかな色。柄はシンプルに。
このきものは私の大好きなアイスブルーグレーを主に白、そしてけっこう沢山の色がこっそり入って深みを出しています。
そして生糸を混ぜた糸使いでさらっとした肌触りです。
白や淡い色の帯がこの頃には爽やかでしょう。もっと暑くなってきたら自然素材の糸味を活かした透け感のある夏帯を。秋口にはグレーやベージュ、茶系の帯などを合わせるとシックな感じに。様々に着こなせそうです。

2011/03/04

「つむぎのこもの展」のこと

この三月三日は桃の節句とは名ばかりの、雪の降る寒い日となってしまいました。本当の春はもう少しでしょうか。
お知らせしていました「つむぎのこもの展」(伊と忠本店)が始まりました。
東京のGINZA店での個展とはまた違った雰囲気での展示会です。
礼装用の草履やバッグからお庭下駄まで、すごくたくさんの伊と忠商品がずらりと並んだ店内の一角にコーナーを設けていただき、コンパクトに展示しています。バリエーションがあるものはストックしてあり、すぐにご覧いただけますので、どうぞお申し付け下さい。
桜をはじめ春らしい色のものが多く、「春気分」を先取りしていただければ嬉しいです。

2011/02/25

佳編コラボのこと

もう一つの初登場。ずっと「こんなものがあればいいなぁ....!」と思っていた草木染めの糸を使ったオリジナルな帯締めです。
これまでベーシックな色の無地の上質な帯締めが一番私のきものや帯に合うと言ってきました。それでも充分に季節感や自分らしさを表現できると思います。
でも、華美ではないけれど、オリジナリティーがあり、シックでシンプルな組柄のもの、特に単衣の季節にちょっとアクセントになる細めの平組のものが欲しいなぁ、と思っていました。
知人の紹介で、京都へ組紐の修行にきている方と出会い、何度も打ち合わせを重ねて「桜」で染めた三色の淡い色の組紐用の糸をお渡しして、沢山の組み方の中から選んで組んでもらった初めてのコラボ作品2点です。
淡い桜色とグレーの二色使いのものは両端が市松状にモダンな柄に。藤鼠色が両端を引き締めた三色使いのは中央の桜の一本筋がシャープな柄になりました。
この組み方なら盛夏にも使えますね。これからもお好みの色でお誂えを承っていこうと思います。

伊と忠コラボのこと

今回の展示会で初登場する、伊と忠と私の裂地のコラボ作品です。
紬帯の裂地を台に使ったカジュアルな草履とバッグです。完成品として展示するのはこの4点だけですが、もしご希望があれば手持ちの裂地からお選びいただきお誂えができます。(展示会期間中のみ)

2011/02/12

「つむぎのこもの展」のこと

この冬の寒さと雪の多さにはびっくりでした。私の住むところは京都市内より標高が高いので、昨年末から二月にかけて、なんども見事な雪景色を堪能しました。
こんな冬を過ごすと、ひときわ春の訪れが待ち遠しいですね。
さて、もうすぐ弥生。三月三日から十三日まで、京都四条河原町の「伊と忠本店」で展示会をいたします。一昨年の秋に東京の「伊と忠GINZA」で個展をさせていただきました。その後はまた普段どおりお誂えだけで制作していたので、多くの方にご覧いただくのは久しぶりです。
ご存知の方も多いと思いますが、「創作京履物 伊と忠」は草履が中心の老舗ですから、お店の一部のコーナーで私の作品を展示します。ですから、今回は私の草木染め手織り紬の裂地を使って作っている、きものまわりや和のテイストのオリジナル小物を展示いたします。きものはやはりお誂えでの制作に向くので出品せず、紬帯や夏帯、春らしいストール、帯揚げや草履袋、数寄屋袋などなど十種ほどの小物たちです。
初登場するのは私の紬帯地を台に使った伊と忠との「コラボ草履」や私が草木染めした糸を組んでもらった「草木染の帯締め」です。どちらもありそうでなさそうな、紬好きの方が「シンプルでシックなんだけど、オリジナルなのがいいなぁ。。。」と思って下さるような素敵なものになりそうです!
ちょうど春に向かってうきうきとする季節なので、桜や栗をはじめ優しい綺麗な色のものが多くなります。
どうぞ、春の京都へおでかけください。おひな様の日から始まります。
【小枝かすみ×伊と忠 つむぎのこもの展】
◎開催期間: 2011年3月3日(木)から2011年3月13日(日) 期間中無休
◎作家在店日: 3日(木)・5日(土)・6日(日)・12日(土)・13日(日)
◎営業時間: 10:00から20:00(最終日は18:00まで)
◎開催場所: 伊と忠本店店内
伊と忠(本店) 京都市下京区四条河原町東入ル
■阪急電鉄河原町駅下車、3番出口を出て四条通を東に30メートル →MAP
075-221-0308
10:00~20:00 不定休(展示会期間中は無休)
http://www.kyoto-itochu.jp/

2010/12/28

男のきもののこと

きものを織りはじめた頃から「男のきもの」は大好きでした。
そもそも自分が着たいと思うものが男物っぽいシックな紬だったからでしょうか。
今回ご注文頂いた方は「全部まかせるから、要るものみんなコーディネートして」と言って下さいました。すごく嬉しい!
かねてよりよく存じている方ですので、こんな感じで着て欲しいなぁ、とイメージはすぐにかたまりました。
60代、髪の色が綺麗に白くなってこられているので、明るくお洒落な色を!
従来の男ものアンサンブルみたいな沈んだ紺や茶色、グレーではないものを!
永年の重責あるお仕事から、ご自分の時間を楽しむ余裕のある暮らしにシフトされる、なんとも素敵な時期に作らせていただくのですから。
きもの 羽織 帯 長襦袢 草履 足袋。(細かく云うと、胴裏 羽裏 羽織紐 半襟まで)微妙な茶〜鼠色系を中心にコーディネートしました。
きものは桜で染めた藤煤竹色に練り色の少し滲んだ大名縞。
羽織は桃で染めた金茶色に白金色が隠れた無地感覚の細縞、額裏は茶色地の富士山の縫い絞り染め、羽織紐はシンプルな房無しのリバーシブル。
帯は黒鳶色にいろんな茶色の細縞。
長襦袢は黄金色に鳥獣戯画、焦げ茶の半襟。
足袋は分銅屋の茶色。
しめは、私の裂地で本綿入りの台と花緒を伊と忠でオリジナル草履を作ってもらいました。
地味に落ち着いた感じとは反対に、羽織をより明るい色にしました。目に映る面積は一番広いからです。柄はシンプルに。きものの縞はスーツによくあるペンシルストライプとして馴染みやすく粋な印象です。
お正月や、お花見、お食事会、お芝居やお相撲見物。うんとお召し頂けると嬉しいです!

大変ご無沙汰しました! 羽織のこと 3

秋からずっと更新をお休みしていました。すみません。ずうっと制作に没頭してしまっているうちに年末になりました。この間に作ったもののことなどを少し振り返ってみたいとおもいます。
秋らしく肌寒い気候になった頃に、なんとか間に合った羽織です。
以前に桜の色のきものを作らせていただいた方の羽織です。これまでは私のもふくめて茶色系が多かったのですが、今回は優しく淡い色にしました。
やはりこれも桜で染めました。媒染が違うベージュグレーとグレーの万筋縞です。まったくの無地よりも深みがあり紬らしさを感じられます。
アウターとしての要素もあるので、万一の汚れも目立ちにくいでしょう。いろんな着物と会わせることを考えるとあまり主張の強くない柄が素敵だと思います。今回の最大の山は羽裏でした!
前回、イタリアンプリントの洋服地を使い個性的に素敵になりました。
今回はいつも通り私の縫い絞りをご所望いただいたので、どんな柄を?とお聞きしたところ、「羊でお願いします。未年の牡羊座なんで!」と即答されました。「はい、やってみます。」とお受けしたものの、すぐには下絵ができませんでした。
これまでは室町時代の辻が花染めの図案などを参考にすることが多かったのですが、日本の伝統的な柄にあまり羊は見かけないですよね。思いつくのは正倉院の樹下羊ですがちょっと違う感じ。
いろんな羊を描いてみるうちに何となく羊と雲が合わさってきてモコモコの牡羊と雌羊が空に駆け上がっていくみたいな羊を描きました。モコモコの方が縫い絞り染めをするのに適しています。大地と空の色は前述の桃で染めた優しい鳥の子色です。苦労したけれどとっても楽しかったです。羽織紐はやはりいつものシンプルなもの。可愛いめの色を選びました。

2010/10/11

桃の樹のこと 2

(前回からのつづき) やっと秋らしい日が続くようになりました。
桃の枝を何度も煮出して作った染液は思ったよりも薄い色をしていました。
どんな色が現れてくれるのかドキドキです。でも、いつも以上に「出会えた色がこの樹の色なんだ」と受けとめよう、という気持ちです。
この夏の猛暑で植物も夏バテ気味かもしれないなぁ。。。と思いながら小さな絹布でテスト染めをして、数種の媒染剤でおよその色味を確認しました。
そして、薪ストーブの灰で作った灰汁で精錬した生繭の座繰り生糸と真綿紬糸を準備しました。
いよいよ染液に浸します。染液の色は琵琶の実のようなオレンジがかった色です。
しばらくすると糸はポーォーとうす桃色に染まってきました。淡く優しい、桜より少し黄味の薄紅を含んでいます。
これは。。。そう、桃の果実の皮や果肉の色味です!桃の花の強いピンクではなく実の色なんです!
できればこのままの色を定着させたいので、椿の樹の灰汁媒染にしました。少しづつ明礬、銅、鉄媒染でバリエーションも染めました。
今回の「想い出の桃の樹」の色を糸に移し、織物にするにはできるだけ「素」に、と思い、このうす桃色を活かすために濃く染め重ねず初々しい色に留めました。この色をベースに媒染違いのグレーや黄色などを加えたシンプルな柄にしようと思います。
織りにかかるまで、しばらく糸棚でお休みしていてもらいます。

2010/10/02

桃の樹のこと 1

とんでもなく暑い夏の間中お休みしていました。やっと、きものまわりのことを考えるのが楽しい季節になりました。
今日のお話は植物と色と織物のご縁のこと。
友人がご両親のお家を受け継がれることになりました。東京の山の手、今は人の多い場所柄にもかかわらずお庭もあります。住み継ぐためのリフォームで、車庫を造るのに何本かの樹を伐ることになりました。その中にリビングの出窓を覆うほどの一本の桃の樹がありました。何とその樹は、昨年ご高齢で亡くなられたお母様が食された桃の種を植えたところ、芽を出し、ぐんぐんと育ち、ここ数年前から毎春花を咲かせるようになったそうです。強い生命力を感じさせるこの樹をとても大切に思っておられたようで、春の到来を待ち咲く花を寿ぐいく首かの歌を詠み残されていました。
その友人から「なんとかこの樹を活かす良い方法はないかしら。。。」と問われた私は、「この樹で糸を染めて織りましょう、何か形のあるものを!」と答えていました。家族ぐるみ大変お世話になったお家です。私にできることで命を生かして、美しく残したい!と思いました。
工事に入る直前に、ご夫婦で枝を伐ってくださいました。
さっそく段ボールに詰められて届いた桃の枝で糸を染めます。秋とは言えまだ夏の終わりのようなこの時期にどんな色が現れるのでしょうか?
秋晴れの日、枝を煮出します。  (次回へつづく。。。)