2011/12/12

グレーと茶色のこと

あまり晩秋を感じることなく十一月が過ぎ、師走に入りやっと冬らしくなりました。
この秋に向けて制作したきものと帯です。
以前、桜で染めた柔らかなピンクのきものと藤鼠色の帯を作らせていただいた方から、
「グレーのきものと茶色の帯」と言うテーマをいただいて作りました。
やはり、はじめのきものは春の雰囲気がします。そして今回のきものは秋の雰囲気がします。
グレーは「いまどきの紬のきもの」の代表格のようです。シックで都会的。
洋服の感覚でコーディネートしやすく、洋服の中でも浮かない。そしてどんな色とも合わせやすい。
グレーの無地紬からきものに入られた方も多いことかと思います。
私の作る「グレーの紬」は近づくと分かる綺麗で可愛い色もいっぱい見え隠れします。
全体には栗や藍の茎など様々な植物で染めたグレーの濃淡。
経糸には虹のように鮮やかな色がかすかに潜んでいます。
緯糸には光の筋のように明るい色が差し込んでいます。
帯は焦げ茶とベージュとグレーを使ってギンガムチェックのような小格子を織り出しました。

2011/10/26

秋ストールのこと

暖かな十月でしたが、朝夕の風は冷たくなってきていよいよ秋が深まってきます。
春から夏にかけての薄く軽やかなストールでは少し頼りなくなってきました。
今年はいつもより早く秋冬のストールを織りました。
実を言うと、八月末の新宿ISETANでの展示会に向けて秋らしいストールも!!、と真夏に作ってみたのです。
ところがその会期はまだまだ夏の暑さでしたから、残念ながらちょっと気分に合いませんでした。
ふんわりとした太い真綿紬糸をざっくり織った、幅広のストール2タイプです。
それぞれ少しずつ柄や色が違う格子や縞です。
ピンク系のは桜で染めた優しいベージュピンクにグレーや白を加えて。
ベージュ系のはやはり桜で染めたベージュに藍染めの縹色、栗で染めた茶色や白を加えて。
こちらは大好きな丹波布をイメージして作ってみました。
広くかけて着物ショールに。細くたたんで洋服マフラーに。

2011/08/13

新宿ISETAN 小物展のこと

6月には久し振りに少し長い欧州への旅をしてきました。「美しいもの」をたくさん見ることができた旅でした。私も良いものを作っていきたいと改めて思いました。
そして、夏。本当に暑い日々が続いています。
もうずいぶん、さしせまってきてのお知らせなのですが、8月の24日から29日、新宿ISETANで小物展をしていただくことになりました!!
新宿ISETAN7階の和装小物のフロアです。
お近くの方、ぜひお出掛け下さい。私も会期中、毎日少し在店する予定です。
詳しくは下記のISETANのHPへジャンプしてみて下さい。
そんなわけで、目下それにむけて制作中です。
出品するアイテムはこれまでとそんなに変わりませんが、少しずつ新作も。ストールは幅の広いのもかなり作っています。時間の許す限りいっぱい作りたいと思っています

2011/06/12

単衣のこと 2

引き続き単衣のきものです。今回は盛夏にむけての「薄物」です。
麻上布のように張りがあり、透けるので見るからに涼しげな織物です。
生絹(すずし)、絹芭蕉、紗紬、生紬などなどいろんな呼び方がありますが、つまり精錬していない絹糸は麻糸のように硬いので織り目がつまらず、光沢がなくシャリっとした織物になります。
そのおかげで、肌にまとわりつかず風が入りやすいので涼しく感じられます。
下着や長襦袢、半襟や小物も夏らしい素材にすると夏ならではの着心地です。
実際にはやはり暑いし、汗はかくし、後の手入れもしなくてはいけないし、、、袷の時期以上に大変なんですが。
「きもの好き」が高じてくると、真夏にきものを着て「涼しそうですね!」なんて褒めていただけると、何とも言えない達成感を感じられるから不思議です。
このきものは桜で染めた生糸の中に数色の寒色と白の練糸を縞にした経糸に、赤城の節糸を生糸で緯糸として織っています。節糸の太細が紬糸と同じような味わいを表しています。
盛夏ものというと、ナチュラルな生成りや白、クールな色を地色に考えるところなのですが、御召し下さる方のイメージで、どうしても優しげな桜色を使いたくなりました。
直接お会いした方にお誂えさせていただく愉しみがこんなところにもあります。

2011/05/26

単衣のこと 1

またまたご無沙汰をしておりました。寒い三月からいきなり五月下旬へスキップしました。
単衣は6月からと言っても、この頃は五月でも暑い日が多いですね。
とくに春単衣は早めに着ると軽く涼しく爽やかに感じます。
私は暑がりですから五月中旬の葵祭のころから単衣を着ます。きもの初心者の時には「袷の季節にしか着ないわ!」なんて思っていましたが、どんどんはまるにつれて単衣が気になってしょうがなくなりました。
織りのきものが好きな方には多いかもしれません。とくにナチュラルな素材感が好きな方にとっては春単衣、盛夏単衣、秋単衣と微妙に質感が変化するので着心地も変わってきます。
色はやはり爽やかな色。柄はシンプルに。
このきものは私の大好きなアイスブルーグレーを主に白、そしてけっこう沢山の色がこっそり入って深みを出しています。
そして生糸を混ぜた糸使いでさらっとした肌触りです。
白や淡い色の帯がこの頃には爽やかでしょう。もっと暑くなってきたら自然素材の糸味を活かした透け感のある夏帯を。秋口にはグレーやベージュ、茶系の帯などを合わせるとシックな感じに。様々に着こなせそうです。

2011/03/04

「つむぎのこもの展」のこと

この三月三日は桃の節句とは名ばかりの、雪の降る寒い日となってしまいました。本当の春はもう少しでしょうか。
お知らせしていました「つむぎのこもの展」(伊と忠本店)が始まりました。
東京のGINZA店での個展とはまた違った雰囲気での展示会です。
礼装用の草履やバッグからお庭下駄まで、すごくたくさんの伊と忠商品がずらりと並んだ店内の一角にコーナーを設けていただき、コンパクトに展示しています。バリエーションがあるものはストックしてあり、すぐにご覧いただけますので、どうぞお申し付け下さい。
桜をはじめ春らしい色のものが多く、「春気分」を先取りしていただければ嬉しいです。

2011/02/25

佳編コラボのこと

もう一つの初登場。ずっと「こんなものがあればいいなぁ....!」と思っていた草木染めの糸を使ったオリジナルな帯締めです。
これまでベーシックな色の無地の上質な帯締めが一番私のきものや帯に合うと言ってきました。それでも充分に季節感や自分らしさを表現できると思います。
でも、華美ではないけれど、オリジナリティーがあり、シックでシンプルな組柄のもの、特に単衣の季節にちょっとアクセントになる細めの平組のものが欲しいなぁ、と思っていました。
知人の紹介で、京都へ組紐の修行にきている方と出会い、何度も打ち合わせを重ねて「桜」で染めた三色の淡い色の組紐用の糸をお渡しして、沢山の組み方の中から選んで組んでもらった初めてのコラボ作品2点です。
淡い桜色とグレーの二色使いのものは両端が市松状にモダンな柄に。藤鼠色が両端を引き締めた三色使いのは中央の桜の一本筋がシャープな柄になりました。
この組み方なら盛夏にも使えますね。これからもお好みの色でお誂えを承っていこうと思います。

伊と忠コラボのこと

今回の展示会で初登場する、伊と忠と私の裂地のコラボ作品です。
紬帯の裂地を台に使ったカジュアルな草履とバッグです。完成品として展示するのはこの4点だけですが、もしご希望があれば手持ちの裂地からお選びいただきお誂えができます。(展示会期間中のみ)

2011/02/12

「つむぎのこもの展」のこと

この冬の寒さと雪の多さにはびっくりでした。私の住むところは京都市内より標高が高いので、昨年末から二月にかけて、なんども見事な雪景色を堪能しました。
こんな冬を過ごすと、ひときわ春の訪れが待ち遠しいですね。
さて、もうすぐ弥生。三月三日から十三日まで、京都四条河原町の「伊と忠本店」で展示会をいたします。一昨年の秋に東京の「伊と忠GINZA」で個展をさせていただきました。その後はまた普段どおりお誂えだけで制作していたので、多くの方にご覧いただくのは久しぶりです。
ご存知の方も多いと思いますが、「創作京履物 伊と忠」は草履が中心の老舗ですから、お店の一部のコーナーで私の作品を展示します。ですから、今回は私の草木染め手織り紬の裂地を使って作っている、きものまわりや和のテイストのオリジナル小物を展示いたします。きものはやはりお誂えでの制作に向くので出品せず、紬帯や夏帯、春らしいストール、帯揚げや草履袋、数寄屋袋などなど十種ほどの小物たちです。
初登場するのは私の紬帯地を台に使った伊と忠との「コラボ草履」や私が草木染めした糸を組んでもらった「草木染の帯締め」です。どちらもありそうでなさそうな、紬好きの方が「シンプルでシックなんだけど、オリジナルなのがいいなぁ。。。」と思って下さるような素敵なものになりそうです!
ちょうど春に向かってうきうきとする季節なので、桜や栗をはじめ優しい綺麗な色のものが多くなります。
どうぞ、春の京都へおでかけください。おひな様の日から始まります。
【小枝かすみ×伊と忠 つむぎのこもの展】
◎開催期間: 2011年3月3日(木)から2011年3月13日(日) 期間中無休
◎作家在店日: 3日(木)・5日(土)・6日(日)・12日(土)・13日(日)
◎営業時間: 10:00から20:00(最終日は18:00まで)
◎開催場所: 伊と忠本店店内
伊と忠(本店) 京都市下京区四条河原町東入ル
■阪急電鉄河原町駅下車、3番出口を出て四条通を東に30メートル →MAP
075-221-0308
10:00~20:00 不定休(展示会期間中は無休)
http://www.kyoto-itochu.jp/