2015/11/22
感激の再始動 羽織のこと
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一年あまり受注を休んでいて、この春頃から満を持して受注制作を再開しよう!と思いました。
ところがよく考えてみると。。。お店があるわけでもなく、私の方から「また始めましたので、どうぞ!」と発信する術もなく。。。
”まぁ、いいかぁ。初心に返って、自分用のとかを作って勘を取り戻そう!
作ってみたかったものもあるし。そのうち良い風も吹いてくるかもしれないし...”
なんてのんびり考えて手を動かしていました。
すると、あるお客さまから「(以前お作りした)単衣の羽織を着てお出かけして、とても好評でしたよ!」と嬉しいご報告がありました。
そしてなんと、「『再開第一号』は私のを作ってください。」と仰ってくださいました。
ものすごく嬉しかったです。
うまく言葉にできませんが、本当に感激しました...。
実のところ、この方は本当の意味で「いちばん最初のお客さま(『開始第一号』)」でした。
全く知らない方が、偶然に私の作品をご覧になり、探し当てて連絡をくださったのです。
それは私にとって『奇跡的』な事でした。
まさに、『夢が叶った瞬間』でした。
以来、ずっといろんなやりとりの中からたくさんの事を学ばせていただき、さまざまな作品を作らせていただきました。
私の受注制作がそれなりに軌道にのり、ご注文くださった方々にずいぶんお待ちいただくようになった時も。
そして、今回また私を勇気づけてくださいました。
私はいまあらためて、ご依頼いただける事の喜びを感じています。
今まで私に制作をご依頼くださり、長時間お待ちいただいた、すべてのお客さまお一人お一人を思い浮かべながら、心から感謝しております。
機会があれば、またどうぞよろしくお願いいたします。
そして、何となく気にはなるけれど、敷居が高いわ..。とか。連絡しにくいわ..。
などとお考えの方。
どうぞ、ご遠慮なくお問い合わせください。
お待ちしております。
ーーちょっといつもになく、私の内側の話になってしまいました。お許しを。ーー
で、話は戻って。
一度目は真綿紬の無地で、袷の羽織。
二度目は玉紬の細かい縞で、単衣の羽織。
今回は玉紬の細かい縞で、袷の羽織のご注文です。
たくさんきものをお持ちの方ですから、具体的に合わせたいきもの類を知らせてくださり、それに合う色味や柄や質感を決めていきました。
羽織ブームとはいえ、シックな羽織をお召しになる方はそれほど多くないようですが、秋から冬、春先にとても素敵なコーディネートを楽しめます。
前にも羽織の項目でお話ししましたが、着心地を含めて、羽織用に織ります。
今回はご所望により、羽裏地は私が縫い絞りで「雪模様」を染めました。
羽織紐はいつもの房なしのシンプルな紐を濃茶色にしてひきしめました。
2015/11/18
畝織り(うねおり)帯のこと
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このところ、時間に追われているときにはやってみたくても出来ない織り方を試しています。
これらは、八寸帯です。
全くの平織りなのにこんなふうに多色の市松格子の柄が織れるのです。
数年前、とてもきちんとした技術をお持ちの染織作家のかたの講習会で、この「畝織り」と言うのを知りました。
もちろん講習会と言っても実技を習えるわけではなく、作品を例に原理をレクチャーしてくださるだけですから、実際に自分でいちから「機こしらえ」をして織ってみないと分からないものなんです。
ずっとやってみたくてウズウズしていたのですが、お待ちいただいているご注文の事を考えると、新しいことはなかなかできなくて..。
やっと挑戦できました。
これはうんと大きな市松格子ですが、「三崩し」や「ヤシラミー」などの柄と同じ原理です。
そして八寸帯なので、ある程度の厚みと強さが必要ですから、糸の太さの組み合わせも重要です。
何となく金糸も混ぜたので、ちょっと私らしくない帯なになったかもしれませんが、
とても軽くてこの独特の畝が帯としてずれにくく、質感がしっかりとしていてとても良いんじゃないかしら...と思います。
柄を小さくしたり、配色の強弱を近づけたりで、うんと展開出来そうです。
もっとシンプルな色づかいで、市松だけではない格子柄も織ってみたと思っています。
ただ、機から降ろすとすごく丈が縮んでしまいました。やはり畝ができるぶん、経糸がくわれるのでしょう。
超スリムな人向け?...いやいや、私がんばって締めます。
やはり、初めての技法には問題点がいっぱい。
だから面白い。試作は大事です。
でも大好きな市松格子が織れ、格子のバリエーションが増えてすごく嬉しいです。
2015/09/02
紙布帯のこと
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八月初めの猛暑はすごかったですね。 ようやく秋の気配が近づいてきました。
またもや単衣にまつわるお話です。
六月や九月の透けない単衣のきものや、五月や十月の軽やかな袷のきもののときに欲しいなぁ…と思っていた帯があります。
手薄い織りで、帯芯の必要のない八寸帯で、くせのないすっきりとした帯。
真綿紬の八寸の帯は良いこと尽くめなのですが、やはりちょっと暖かみを感じるし、麻糸や生糸を使った透ける帯では夏すぎるし。
と言うことで、創ってみました。
けっこう細かい密度の筬でフラットな紙の糸を経糸にも緯糸にも使いました。
紙の糸と言っても草木染めの炊き染めにも水洗にも耐える強い糸です。
絹糸に比べて光沢がなくマットな発色。太細もありません。
そしてとても軽いです。
五倍子の藤鼠色と白でシンプルな経て縞と格子を加えた横段柄と二点織ってみました。
この秋、どちらかを締めてみようと楽しみにしています。
2015/04/19
単衣のこと 3
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ずっと前、洋服地の商品企画をしていたことがありました。
アパレル向けの生地ですから 秋には春夏もの、春には秋冬ものと真逆の時期にパリコレなどを参考に色柄や素材の企画をたてていくのです。
なのに、今はどちらかと言うと それをお召しになっていただく(自分が着るつもりになって)季節に考えたい、と思うことが多いです。
多分 つよい思い入れを込めて一点一点作るからでしょうね。
単衣の時期にはとくに小刻みにそう感じます。
昨年、春と初夏の間くらいにこんな質感で着たいな、と思い作り始めた単衣着尺です。
桜で染めた生糸や駒糸に色々な色糸や白糸が経糸になっています。そのためそれほど透けないし、シャリシャリでもないのにさらっとしています。
緯糸はこれも桜染めのベージュピンクの玉糸に時々グレーの太めの糸が入ります。これは絹紅梅のように肌から生地が少し離れる効果があるように感じます。
残念ながら、昨年は企画途中で制作が進められなかったのですが、無事に織り上げることが出来ました。
単衣の季節を間近にひかえ、いい感じ!と眺めています。
2015/02/02
冬のストールのこと
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冬の初めに作り始めたストールです。
洋服や普段着に巻くストールを作りたくて。
若い人や男性にもこの真綿紬の暖かさと心地良さを味わってほしくて。
どうしても冬の洋服は暗い色になりがちです。でも、首回りにビビットな色を巻くとなんだか明るい気分に!
実は。。。以前あるところから、とても質の良い太めの真綿糸をたくさんいただきました。
白なら小躍りするほど嬉しいのですが、残念ながら赤や黄色、緑や紫、青ともろに化学染料の強い色、「昭和の和装」の色に染まっていました。
でも軽くて太細があり柔らかくほんとうに良い糸なんです。
で、これはこれで、こんなふうに使ってみました。
いつもの私が植物で染める色合いとは違うけれど、この季節には寒さに負けない強さが生かせました。
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