2011/06/12

単衣のこと 2

引き続き単衣のきものです。今回は盛夏にむけての「薄物」です。
麻上布のように張りがあり、透けるので見るからに涼しげな織物です。
生絹(すずし)、絹芭蕉、紗紬、生紬などなどいろんな呼び方がありますが、つまり精錬していない絹糸は麻糸のように硬いので織り目がつまらず、光沢がなくシャリっとした織物になります。
そのおかげで、肌にまとわりつかず風が入りやすいので涼しく感じられます。
下着や長襦袢、半襟や小物も夏らしい素材にすると夏ならではの着心地です。
実際にはやはり暑いし、汗はかくし、後の手入れもしなくてはいけないし、、、袷の時期以上に大変なんですが。
「きもの好き」が高じてくると、真夏にきものを着て「涼しそうですね!」なんて褒めていただけると、何とも言えない達成感を感じられるから不思議です。
このきものは桜で染めた生糸の中に数色の寒色と白の練糸を縞にした経糸に、赤城の節糸を生糸で緯糸として織っています。節糸の太細が紬糸と同じような味わいを表しています。
盛夏ものというと、ナチュラルな生成りや白、クールな色を地色に考えるところなのですが、御召し下さる方のイメージで、どうしても優しげな桜色を使いたくなりました。
直接お会いした方にお誂えさせていただく愉しみがこんなところにもあります。